2024-03-29T15:24:38Z
https://soar-ir.repo.nii.ac.jp/oai
oai:soar-ir.repo.nii.ac.jp:00011085
2023-01-26T01:23:10Z
1016:1018:1070:1082
水稲湛水直播栽培における害虫貝防除時の薬害回避に関する研究
Study on the method of snail and insect pest control without chemical injury in submerged direct seeding in rice cultivation
松島, 憲一
ja
イミダクロプリド剤
酸素発生剤
本稲湛本直播栽培
スクミリンゴガイ
石灰窒素
本研究では省力,低コスト稲作技術としての水稲湛水直播栽培法の確立に向けて,湛水直播栽培におけるスクミリンゴガイ防除およびツマグロヨコバイ,ウンカ類防除時の薬害回避法について検討した。 石灰窒素を用いたスクミリンゴガイ防除能力についてポット試験で確認したところ,散布48時間後では窒素量2.5g/㎡の散布量であっても5g/㎡に比べて若干劣るが同等の殺貝能力が認められた。石灰窒素溶液を用いて水稲種子の発芽試験を行い,発芽後の幼芽伸長への影響を調べたところ,酸素発生剤無被覆種子では石灰窒素濃度が高くなると幼芽伸長が抑制されることがわかった。また,酸素発生剤を被覆した種子では石灰窒素を加えない蒸留水での発芽時よりも0.6g/Lおよび1.2g/Lの濃度の溶液の場合で幼芽伸長が向上した。しかしながら酸素発生剤を被覆せずに溶液中に加えて発芽試験を行った場合では無被覆の場合と同じく幼芽伸長が抑制された。石灰窒素溶液に酸素発生剤を混合し,石灰窒素の主成分であるカルシウムシアナミドの濃度を測定したところ,酸素発生剤を加えた場合にカルシウムシアナミド濃度が減少していることから,石灰窒素は種子に被覆された酸素発生剤層を浸透する過程で分解・無毒化したために,被覆種子の幼芽伸長が阻害されなかったと推察された。次に,石灰窒素散布土壌を用いたポット試験により水稲種子の上中出芽性を調査した。この結果,酸素発生剤被覆種子の場合,散布する石灰窒素量が増えても出芽障害や幼芽伸長阻害は見られず,むしろ向上する結果となった。一方,無被覆種子では石灰窒素量が5g/㎡を越えると出芽障害が見られ,幼芽伸長も石灰窒素量が増えるに従い抑制された。また,播種前に石灰窒素散布土壌を代かきすることによる出芽への影響を調べたところ,播種前の代かきは石灰窒素による出芽障害を軽減することがわかった。石灰窒素散布土壌の表面水のカルシウムシアナミド濃度を代かきの有無で比較したところ,代かきをした後の濃度が著しく減少していたことから,石灰窒素による出芽障害は播種前の代かきによる石灰窒素の分解促進により軽減されることがわかった。同様にポットによる出芽試験を行い,石灰窒素散布土壌中の麦稈の影響を調べた。これにより麦稈を施用した石灰窒素散布土壌では出芽障害が増大する結果となった。なお,払実際の圃場条件での出芽試験の結果では,窒素量4g/㎡散布の場合は無散布の場合と同様の出芽率であったが,窒素量8g/㎡の場合では出芽率が劣る結果となった。以上の結果,石灰窒素による水稲種子の出芽障害は酸素発生剤の被覆により軽減されること,播種前の代かきにより軽減されることが判明した。また,スクミリンゴガイ防除と水稲の生育を考えると窒素量で4g/㎡の石灰窒素散布量が適量であると結論づけられた。 次に酸素発生剤とイミダクロプリド剤を混和被覆する場合の混和方法が出芽へ及ぼす影響や打込み式点播播種機での播種時における被覆剤の剥離程度について調査した。被覆3日後に播種した場合の最終出芽率をみると,過乾燥,標準乾燥条件では薬剤の有無・混和方法による大きな差はみられなかったものの,有意ではないが簡易混和区では出芽率が低い傾向にあった。無乾燥条件では薬剤無混和種子に比ベイミダクロプリド剤混和種子の出芽率が低く,そのなかでも簡易混和種子が最も低かった。一方,被覆10日後に播種した種子の場合では過乾燥および標準乾燥種子において薬剤混和による出芽率の大きな低下はみられなかったが,無乾燥条件の種子では薬剤混和による低下が明らかにみられ,薬剤混和被覆種子の出芽率が対照に比べて一律に低い結果となった。一方,被覆剤の剥離率は,全層混和で大きく,簡易混和の場合で小さくなった。また,過乾燥条件の種子で剥離が大きかった。以上の結果,酸素発生剤とイミダクロプリド剤を水稲種子に混合被覆する場合は,全層混和もしくは標準混和の場合では出芽への障害が出にくいことが分かった。また,1週間以上の貯蔵を要する場合は被覆後に十分乾燥させることにより障害を防止することができることが分かった。しかしながら,出芽の良かった全層混和・過乾燥条件で剥離が多くなったことから,現時点では標準混和被覆種子を標準乾燥条件で使用することが良いと思われる。 今後,本研究で得られた結果である薬害回避防除法について圃場試験を行い,防除効果,水稲の栽培・生育についてのより詳細な研究を実施すると共に,営農・経営に関した研究も含めて総合的に進めていく必要がある。
Article
信州大学農学部AFC報告 2: 1-22(2004)
信州大学農学部
2004-03-20
jpn
departmental bulletin paper
VoR
http://hdl.handle.net/10091/1751
https://soar-ir.repo.nii.ac.jp/records/11085
1348-7892
AA11845727
信州大学農学部AFC報告
2
1
22
https://soar-ir.repo.nii.ac.jp/record/11085/files/AFCbulletin02-01.pdf
application/pdf
2.8 MB
2015-09-25