@article{oai:soar-ir.repo.nii.ac.jp:00010660, author = {大井, 美知男}, issue = {2}, journal = {信州大学農学部紀要}, month = {Dec}, note = {本研究は4倍体ラッキョウの倍数性及び成立要因について,PFP処理による染色体構成の収れんしたカリクロン植物の作出,C―バンド分染法による4倍体ラッキョウと染色体構成収れん個体の核型比較,さらに4倍体ラッキョウとヤマラッキョウの人為種間交雑などを行って検討したものである。また,ネギ属作物のC―バンド分染法による核型分析の結果から,成立過程の類似性及び類縁関係について考察を加えた。 本研究で得られた結果は本文第1章から第4章に詳述したが,以下にその概要を章ごとにとりまとめて述べる。1. 染色体構成の収れん個体の作出 1)4倍体ラッキョウからの染色体減数個体を獲得するため,PFP処理によるカリクロン植物体の作出を試みた。その結果,カルスの増殖はPFPを高濃度に添加するほど抑制される傾向が認められた。また,カルスからの再分化個体数は逆にPFPを高濃度に添加するほど増加する傾向が認められた。しかし,順化後の生存率はPFPを高濃度に添加するほど低下した。これはPFP濃度が高まるほど分裂時における染色体の脱落が連続的に起こり,その結果ある程度の期間は植物体として生育しても,やがて生育が停止するものと考えられた。 2)順化に成功した再分化個体の染色体調査を行ったところ,PFP処理により多くの3倍性個体が得られた。これら3倍性個体は順化直後の観察では異数体を含む細胞キメラであったが,10か月後にはほとんどの個体が正3倍体となっていた。 3)PFP処理により得られた人為3倍体からの染色体減数個体を獲得するため,再びPFP処理による再分化個体の作出を試みた。培養中のカルス細胞の染色体数を調査したところ,7から26の染色体を含む細胞が観察され,カルス細胞におけるPFPの染色体減数効果が認められた。 4)PFP処理による人為3倍体由来のカルスからの再分化個体の染色体を調査したところ,すべてが母個体と同じ染色体数であり,染色体減数個体はまったく得られなかった。2. 4倍体栽培種ラッキョウの稔性 1)ラッキョウ及びその近縁種とされるヤマラッキョウを用い,花粉稔性について比較検討した。その結果,完全花粉率はヤマラッキョウが100%近い値を示したのに対して,ラッキョウでは50%以下であった。また,人工培地上での花粉発芽率は,ヤマラッキョウの64.7%に対し,ラッキョウでは2.4%と極端に低いものであった。 2)ラッキョウとヤマラッキョウの自殖及び正逆交配を行い,胚珠培養による発芽率を調査した。その結果,ヤマラッキョウの自殖及びヤマラッキョウ×ラッキョウにおいて高い発芽率を示したが,ラッキョウの自殖及びラッキョウ×ヤマラッキョウではまったく発芽が認められなかった。このことは,ラッキョウでは受精能力のある花粉及び卵細胞数が少ないことを意味し,成熟分裂が正常に行われていないことが示唆された。3. ラッキョウ及びネギ属作物の染色体分染による核型分析 1)4倍体ラッキョウ及び人為3倍体ラッキョウの体細胞染色体のC―バンド分染による核型分析の結果,4倍体種は部分異質4倍体と推察された。しかし,人為3倍体の染色体構成の調査から,4対の異質染色体もそれぞれ2対間で高い相同性があることが示唆された。 2)チャイブとアサツキの体細胞染色体のC―バンド分染により,両種の一部の染色体が相似的であることから,同祖性の高い染色体構成からなる近縁種と推察された。また,アサツキのPMC・MIにおける対合染色体のC―バンド分染により,アサツキの染色体は8対の異型相同染色体から構成されていることが明かとなった。 3)体細胞染色体のC―バンド分染により,タマネギ及びネギではそれぞれ8対の相同染色体が確認された。一方,ワケギでは相同染色体が1対も確認されず,ワケギの雑種起源を示唆した。しかし,C―バンド分染の結果からは,A. cepaグループ及びA. fistulosum由来の染色体を,一部を除き確定することはできなかった。 4)ニンニクの体細胞染色体のC―バンド分染により,7対の相同染色体と2本の非相同染色体が識別された。また,2本の非相同染色体も形態及びC―バンドパターンに類似性があることから,異型相同染色体と推察された。 5)C―バンド分染によりニラの体細胞染色体は,4本の相同染色体からなる4対と,2本の相同染色体からなる8対の染色体を構成していた。このことから,ニラは部分異質4倍体であることが明かとなった。4. 総合考察 本研究の結果,ネギ属作物の中の不稔性種は,染色体の構成上,3タイプに分類された。すなわち,ワケギにみられるような,相同染色体が1対もない複半数体型,ニンニクにみられるような,1対の非相同染色体対をもつ異型対型,および,ラッキョウにみられるような,4倍体型相同染色体対と2倍体型相同染色体対が混在する部分異質4倍体型の3タイプである。このように,ラッキョウは他の不稔性種と異なる染色体構成であったが,ネギ属作物のC―バンド分染による体細胞染色体の核型分析の結果,稔性種であるニラがラッキョウと類似した部分異質4倍体であった。このことから,両種は同じような過程により成立したものと推察された。 また,ラッキョウの染色体減数個体の作出において,3倍体より低次の倍数体個体が得られなかったことから,ラッキョウの「Optimum polyploidy」は3倍性にあるものと考えられた。しかし,得られた人為3倍体個体の体細胞染色体のC―バンド分染により,異型相同染色体対は観察されなかったことから,3倍体より低次の倍数体が出現しないのは,ゲノム構成に起因するものではないと推察された。, Article, 信州大学農学部紀要. 27(2): 49-90 (1990)}, pages = {49--90}, title = {染色体構成の収れんからみたラッキョウの成立要因に関する研究}, volume = {27}, year = {1990} }