@article{oai:soar-ir.repo.nii.ac.jp:00011197, author = {楊, 喜田}, journal = {信州大学農学部演習林報告}, month = {Mar}, note = {自然災害による各種の攪乱は森林に広く影響している。これによって,植生,特に高い森林植生がなくなり,森林立地が荒廃される。その荒廃された生態系のなか,厳しい立地条件,草本植物との競争などの影響で,森林群落を回復させ,防災および生産能力を向上させることは容易ではない。荒廃跡地も一つの生態系として受け止め,土壌の発達,植生の侵入,安定,遷移過程等はその生態系の自然的条件の中で,治山事業の内容を考えなければならない。森林を形成しようと初期の植生を導入する場合は,その荒廃地の自然的特性を尊重し,植生の遷移過程を前もって把握し,廃廃地の特性に合った樹種の選択や導入方法の確立が必要である。本研究は,荒廃地における植物の回復過程を明らかにするため,地震荒廃地および山腹工事施工跡地を対象にし,土壌と植物の初期発達特性を検討した。1984年9月14日8時48分頃,長野県木曽郡王滝村御岳山南東方地域を震源としてマダチュード6.8の強い地震により発生した荒廃地を対象地とし,植物の自然回復過程を検討した。地震荒廃地における草本植物,木本植物の侵入種類数は,両者とも経過年数に伴って増加し,その侵入は,周辺林地までの距離との間に,明らかな負の相関が認められた。草本植物,木本植物の侵入個体数は経過年数に従って増加したが,木本植物の侵入個体数には,年度による差が大きく,また,当年生稚樹の枯損が多くみられた。ヤナギ属,カバノキ属のような先駆樹種は出現箇所が多く,経過年数に伴って個体数は増加したが,先駆樹種以外のヒノキ,サワラなどは,出現箇所も個体数も少なく,また,出現しても,何らかの原因で枯れてしまい,ほとんど成立しないことを認めた。地震荒廃地における立地条件は複雑で,森林の成立の速さもかなり違う。地震発生後12年の荒廃地における木本植物の発達特性を検討した結果,地震発生後12年を経過した現在,木本群落が三つの発達段階を経って発達したことが明らかであった。(I)階層構造未発達段階:木本植物の侵入・消失の繰り返しが激しく,樹高生長が著しい。この段階まで発達してきた地点は,岩塊におおわれているところがほとんどで,地表が乾燥しやすいと考えられる。(II)階層構造をもつ段階:堆積地点および地表が浅く削りとられた地点では,先駆樹種の樹高生長が著しく速く,階層構造が生じる。上層ではやせ地や乾燥地に耐え育つ先駆樹種のヤマハンノキおよびミヤマヤシャブシに占められ,下層では,耐陰樹種の侵入が多くなったが,ヤナギ類が優勢樹種であった。(III)先駆樹種の侵入が抑制される段階:樹冠うっ閉度が60%付近で先駆樹種の下層への侵入が抑制され,先駆樹種以外の樹種(カッラ,ミツデカエデ,ヒノキなど)の侵入が優勢となったことがみられる。地震荒廃地は,他の誘因により発生された荒廃地に比較して,攪乱された程度がひどく,面積が広いと考えられる。このため,環境条件の厳しい地震荒廃地の復旧にあたっては,先駆樹種をまず導入し,森林の形成に好ましい生育環境条件を作り出すことが重要である。長野県飯田市の野底川流域の割沢支流域を対象地とし,山腹工事施工跡地における土壌と植物の発達過程を検討した。土壌の発達過程は,施工時に人工的な切土,盛土の状況に強く影響されている。今度の調査では,貫入試験による土壌硬度の変化は複雑で,土層深との関係は明確ではなかった。表層土層厚,A層厚および根系分布深は,経過年数の増加によって増加する傾向が認められるが,表層土層厚と根系分布深は,地点によってばらつきが大きかった。表層土層は根系の密度が高く根の伸長が良好な層であると考えられるが,今回の調査で,表層土層厚と根系分布深とは,高い相関関係が認められた。地表から0-30cmおよび30-60cmの土層において,飽和含水率と圃場容水量,0-30cmのみの土壌飽和透水係数と有効水含有量が経過年数に伴って増加した。30-60cmの土壌飽和透水係数と有効水含有量は経過年数との関係は明らかではなかった。0-30cmおよび30-60cmの土層において,速い炭素の集積がみられた。0-30cmの土層において,全窒素含有量は経過年数とともに減少している。30-60cmの土層において,全窒素含有量は0-30cmの土層に比較して値が小さいものの経過年数とともに増加する傾向がみられた。土壌のC/N比率は治山工事の経過年数との間に明らかな関係がみられず,調査地の間にはばらつきが大きかった。これは土壌のC/N比率は斜面の気候環境と植生条件に強く影響されると考えられる。経過年数によって侵入した草本植物の種類数は増加しているが,植被度および生物現存量が減少している。草本植物の導入を行わなかった地点には,地表植被度は低く,地表は不安定である。上層の優勢樹種は,植栽された木本植物ヤマハンノキに占められているのに対して,下層および更新層は侵入したヤナギ類に占められている。侵入木本植物の種類数は極めて少なく,ヤナギ類以外の種類の木本植物の侵入が認められなかった。今回のような植物の導入方法は,気象災害への弱さ,水土保全的な問題点,および生物多様性の乏しさなどの欠点があり,導入方法,導入密度,配置方式などを改善する必要がある。これによって,様々な機能の高い複層林を形成させることが望ましい。, Article, 信州大学農学部演習林報告 35: 47-82(1999)}, pages = {47--82}, title = {荒廃地における土壌と植物の初期発達特性に関する研究}, volume = {35}, year = {1999} }