@article{oai:soar-ir.repo.nii.ac.jp:00011229, author = {馬場, 多久男}, journal = {信州大学農学部演習林報告}, month = {Oct}, note = {崩壊地における砂礫の安定とカラマツ植生の現況を把握し,森林が形成される循環を明らかにするために南アルプス鋸山の熊穴沢を対象に調査した。その結果の要約は次のようである。1 熊穴沢は,斜面から崩壊した土石流堆積物で形成されており,この土石流堆積物内では,さらに,小規模の崩壊地と崩壊堆積物の形成が,恒常的に繰り返されている。2 熊穴沢のカラマツ林は,崩壊地と崩壊堆積物の砂礫が安定した場所に成立することが明らかとなった。3 崩壊地と崩壊堆積物の幅は平均3~6mが多く,縦に長くなるために,カラマツ林も縦に長く成立する傾向がみられる。4 成立したカラマツ林内に更に崩壊堆積物が出来ると,カラマツの根系は砂礫に深く埋没する。埋没したカラマツの樹幹は地表面で不定根を発生し,根系は二段状になる傾向がある。5 根系が二段状になったカラマツ林は,砂礫の移動を防止する自然のダムの機能をはたしているものと思われる。さらに,台風,豪雨,長雨などの自然災害にも強い林分であることが考えられる。6 根系が二段状のカラマツ林は,やがてコメツガ林から混交林などに遷移するが,遷移にともない根系が地表面の浅い部分に張る現象がみられる。7 熊穴沢における森林形成は,以上の1~6の順序で遷移するが,地表面の浅い部分に根を張った混交林は台風,豪雨,長雨などの自然災害により森林の一部が破壊される可能性がある。森林の一部分が破壊し始めると,その部分は次第に大きくなり,崩壊裸地と崩壊堆積物ができやすくなるために,カラマツ林の成立する条件ができあがる。このような森林形成の循環は連続的に変化を繰り返しており,一連の循環で成り立っていることが考えられる。8 熊穴沢には,標高1,400mから左股の上流に向かって連続する森林形成の循環と,右股の標高1,800mから上流に向かって連続する森林形成の2つの循環があることが明らかとなった。9 熊穴沢の森林形成には,砂礫の移動と安定が関係しながら,カラマツ林から遷移する一連の循環がある。この循環が継続するかぎり,天然のカラマツ林も存続する可能性があり,熊穴沢の森林全体が平衡状態を保っていることが明らかとなった。10 今後の問題としては,熊穴沢が国立公園内にあり,天然カラマツ林を中心とした原始的な自然景観の存続のために,砂礫の移動を含めた,森林全体の平衡状態が維持されるような管理が大切である。, Article, 信州大学農学部演習林報告 26: 31-56(1989)}, pages = {31--56}, title = {南アルプス鋸山の熊穴沢における砂礫の安定とカラマツ植生の関係}, volume = {26}, year = {1989} }