{"created":"2021-03-01T06:19:02.091009+00:00","id":16029,"links":{},"metadata":{"_buckets":{"deposit":"eaeec371-e0b1-4a3b-93fe-a432edaa6fc5"},"_deposit":{"id":"16029","owners":[],"pid":{"revision_id":0,"type":"depid","value":"16029"},"status":"published"},"_oai":{"id":"oai:soar-ir.repo.nii.ac.jp:00016029","sets":["1544:1546:1548:1557"]},"author_link":["46203"],"item_10_biblio_info_6":{"attribute_name":"書誌情報","attribute_value_mlt":[{"bibliographicIssueDates":{"bibliographicIssueDate":"2007-04-30","bibliographicIssueDateType":"Issued"},"bibliographicPageEnd":"132","bibliographicPageStart":"117","bibliographicVolumeNumber":"1","bibliographic_titles":[{"bibliographic_title":"信州大学人文社会科学研究"}]}]},"item_10_description_20":{"attribute_name":"抄録","attribute_value_mlt":[{"subitem_description":"本論は、魯迅の歴史小説集『故事新編』の第一篇「不周山」(のち「補天」と改題)に関して論じた中国語論文の日本語訳を補訂したものであり、筆者の”魯迅の歴史小説『故事新編』に関する総合的研究-もう一つの「国故整理」-”の第一篇である。魯迅が「不周山」の執筆に着手した経緯については、作者自身の説明はあるものの必ずしも読み手にその発言の意図が伝わってこず、従来不明とされてきた。筆者は本論(前)に於て「不周山」の執筆意図を含む執筆経緯について各種資料に基づいて独自の解釈を提示した。詳細は以下の通り。○かつて中国国民の劣悪な国民性の改造を目指して史実に比較的忠実な「スパルタの魂」を書いた魯迅であったが、文学革命後は、菊池寛や芥川龍之介の影響で史実に自由に潤色を加えた\"歴史的小説\"に傾倒して何篇か訳出した。ただ森鴎外の歴史物は、その晩年の「渋江抽斎」等の史談物に不満を覚えたからなのだろうか、全く訳していない。魯迅は特に菊池の「三浦右衛門の最後」に感心し、その理由を「この小説が日本の武士道精神[の本質]を暴露し諷刺している」からであるとし、「中国に封建\"名教\"[儒教道徳のこと]を糾弾する作品がまだ欠けているのを慨嘆した」。そして魯迅は現に三浦右衛門と同様な目に遭った楊貴妃の死をテーマにした戯曲もしくは小説の執筆構想を持っていた。○当時文学研究会同人の茅盾は周作人に手紙を出し、その兄魯迅に該研究会の季刊誌的存在たる『小説月報』のために小説の寄稿を依頼した。前述したように歴史物の執筆については、すでに考えていたと思われる魯迅は、茅盾からの依頼を契機に小説の執筆に真剣に取り組むことになった。先ず現代物に手を染めるも出来は芳しくなく、次第に歴史物に関心が向くようになる。○魯迅の歴史小説への関心の背景には、以下に記す如く、胡適流の\"国胡(国の文化芸術)整理\"への反発、\"国粋保存派\"たる『学衡』派と鴛鴦胡蝶派への批判があった。魯迅は胡適らの唱える白話文学を中心とした\"国故\"の整理自体は別に反対ではなく、他人、特に青年に強制すること、\"現実\"や\"主義\"とかかわりを持たせないことに反対した。魯迅は歴史小説の執筆によって、胡適らのとは別の\"国故整理\"、\"現在\"と関わりがあり、他人に強要しない\"科学的国故整理\"の在り方を示そうとした。魯迅が歴史物を執筆したのには、文学革命後の新文学に異を唱え、復古主義を標榜して全ての\"国故整理\"に反対していた\"国粋保存派\"たる『学衡』派への反発もあった。『学衡』派の他に“国粋保存”に熱心だったのは上海の鴛鴦胡蝶派であった。これにも魯迅は諷刺、批判の文章を審いている。○魯迅は「不周山」に於て、当時なお人々の心に生きている、「不老不死」を求める神仙思想を批判した。「不周山」執筆時は、「不周山」以外にとりたてて神仙思想を批判諷刺していないが、その3年前には科学を否定する迷信として神仙思想を痛烈に批判している。○魯迅の属する人生のための文芸を標榜する文学研究会に対抗して芸術至上主義を主張する創造社を結成した郭沫若の女神、女ァZの復活を取り上げた新詩「女神の再生」(詩集『女神』の冒頭作)の出来映えへの不満が、本篇執筆の直接の契機になった。そもそも魯迅は女ァZの復活はいまだしと考えていたし、「女神の再生」はただ「光明」や「再生」を唱えるだけであり、魯迅はこうしたスローガン文学的な作品に我慢できなかった。○日本の九州帝国大学で医学を学んでいた郭抹若は、フロイト精神分析学がことのほか気に入っていたようであり、例えばフロイト精神分析学を使って『西廂記』を分析している。この郭抹若の『西廂記』論を読んでいたと見られる魯迅は「不周山」においてフロイト精神分析学を利用したと回想しているが、フロイト精神分析学を信じて利用したというより、フロイト精神分析学に疑問を持ちつつ別に用意があって利用した(フロイト好きの郭辣若に対する痛烈な諷刺。この点については本論(下)で詳しく触れる予定)。○当時北京大学で発生した講義費の徴収に反対する学生運動は、学長等の辞職、大多数の学生の運動に対する反対の意思表示、学長等の復職を経て、止んだ。大学当局は譲歩して講義資徴収を取り消すも、ただ学生の馮省三だけが、風潮発生後に参加したにすぎず決して中心人物ではなかったにも拘わらず、除籍処分となる。学生たちは勝利したものの、“犠牲者”馮省三の無事を祈る者は皆無であった。魯迅は「即小見大」を書いて学生運動を紹介し、この“犠牲者”馮省三の無事を祈る者は皆無であった事(「小」)から長い間理解できなかった事(「大」)、つまりさる花園にある衰世凱等の暗殺を計画して処刑された「四烈士」の墓のうち三つの墓の墓碑に未だに一文字も刻する者が現われない、つまり彼らの死を記念する者が現われないことの理由を悟ったとした。この北京大学の学生運動に纏わる魯迅の思いは、明らかに「不周山」に投影されている。○これも正に魯迅が「不周山」を執筆中のことであろう、北京各進歩団体が北京大学で連合してロシア“10月革命節紀年会”を挙行した。その開催の報に接して自国中国の辛亥革命の意義を改めて問い直していた魯迅の脳裏に、革命に命を捧げた多くの志士、特に紹興出身の徐錫麟、秋瑾のことが浮かんだに違いない。たぶんこの“10月革命節紀年会”も、魯迅の「不周山」執肇を一層促した筈である。○以上全体として、本作が清末に密告によって処刑された紹興出身の女流革命家秋瑾を始めとする改革や革命に殉じた人々の奮闘と死を、女ァZの奮闘と死を描くことで記念したものであることを示唆した。","subitem_description_type":"Abstract"}]},"item_10_description_30":{"attribute_name":"資源タイプ(コンテンツの種類)","attribute_value_mlt":[{"subitem_description":"Article","subitem_description_type":"Other"}]},"item_10_description_5":{"attribute_name":"引用","attribute_value_mlt":[{"subitem_description":"信州大学人文社会科学研究 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