@article{oai:soar-ir.repo.nii.ac.jp:00002690, author = {青木, 達彦 and 池田, 欽一}, journal = {信州大学経済学論集}, month = {Mar}, note = {伝統的経済学は金融機能の不全現象を情報の非対称性下の合理的選択行動を記述することによって論じてきたが,既存融資先への貸し増しで採算性の悪いいわゆる「追い貸し」についても,不良債権を償却・清算して新規の貸し付けに振り向ける場合と追加融資する場合との収益を比較するという選択行動によって記述してきた。ここに結果的に生じた資金配分上の非効率性は,企業と銀行間の情報の非対称性あるいはプリンシパルとエージェント関係から来る「協調の失敗」によって,「ソフト・バジェット」問題が引き起こされたこととして理解される。本稿はこうした伝統的枠組みに対置して,行動ファイナンス,とりわけ「プロスペクト理論」と呼ばれる考え方に依拠して追い貸しに現れた資金配分上の非効率性,あるいは市場の淘汰機能の麻痺を「非合理的」選択行動として理解し,その実証を試みようとしたものである。そうしたアプローチの出発点におかれたのは,(実務家からの理解を含め)実際の追い貸し行動が,「不良債権額があまりに巨額に上るため,償却するための資本が不足する。銀行には余資が全くない状態で,不良債権貸出先との共倒れさえ現実味を帯びている」といった文脈で捉えられるものとしてであった。これをわれわれは不良債権額あるいは過剰債務が投資の独立な決定因として入り込み,必ずしも投資プロジェクトのファンダメンタルな収益性を基準にして投資や融資の決定がなされているものではないこととして理解しようとした。これは行動ファイナンスにおいて,意思決定が「参照基準点(レフェレンス・ポイント)」に依存せしめられ,レフェレンス・ポイントが動くと意思決定は変化し,選択行動における矛盾やゆがみを引き起こすこととして「不変性の失敗」と呼ばれるところのものである。本稿はそうした「非合理的」選択行動を表すものとしての「追い貸し」を記述すべく,不良債権処理の意思決定過程で合理的選択行動から乖離させるシステマティックな要因を行動ファイナンスの構築素材に求め,これを例えば「サンクコスト効果」として「(延滞債権以下の)不良債権中,回収困難と見做される額」の増加が追い貸し行動に対して果たしうる役割において,あるいは最終処理を先送りしようとする心理的効果.あるいはまた損失エリアでの過度なリスクテーキングといった行動によって理解し,かつ実証しようとしたものである。実証に当たって,われわれは主成分分析を用いて非合理的選択行動を容れる変数群から不良債権処理のパターン化を試み,その中から追い貸し行動を整合的に容れる不良債権の処理パターンを特定しようとした さらにそれら特定の主成分によって個別行を「主成分得点」によって捉え,評価し,もって個別行ごとに追い貸し行動の有無を判断しようとした。こうしてわれわれは,伝統的アプローチが情報の非対称性に依拠して追い貸しを捉えるべく,業種別貸出と事後的利鞘を見ることによって各行における追い貸し行動の有無を判断しようとする立場を代替しようと意図し,両者を比較対照のうちにおいた。すなわち,主成分分析において追い貸しを整合的に位置づけるところの主成分について「0以上」の得点を挙げた先が,業種別貸出から見て「追い貸し」の存在を判断し挙げられてくる信金のグループの内,おおよそ85%以上を占めるという結果を得た。こうしてわれわれは,情報の非対称性に依拠した伝統的アプローチに代替的な枠組として,非ファンダメンタルな変数が選択行動に影響し,もって「非合理的」選択行動として追い貸しを理解する枠組を得たのである。, Article, 信州大学経済学論集 51:49-87(2004)}, pages = {49--87}, title = {主成分分析を用いた不良債権の処理パターンの分析 : 信金の「追い貸し」行動に対する代替的アプローチ}, volume = {51}, year = {2004} }